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2012年02月21日

死刑の相場 (山口県光市母子殺害事件)

平成11年に山口県光市で幼い子供と母親を殺害した大月孝行被告に対し、最高裁は、広島高裁の死刑判決を支持し、被告からの上告を棄却した。

いろいろな面で考えさせられる裁判であったし、数多くの殺人事件の中で、ここまで世の中の話題となった裁判は無いだろう。

刑法において量刑に死刑を予定しているものは12罪。刑法以外では、航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律(ハイジャック防止法)や組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織犯罪処罰法)など、7つの法律や規則において死刑が規定されている。
しかしながら、これらの中には、外国人と通じて日本を武力攻撃させた罪である「外患誘致」など、現実離れした罪状があるし、決闘により相手を殺害したもの(決闘に関する件第3条)といった珍しいものもあるし、現住建造物等放火といった実際に犯行が行われているものもあるが、この場合は、検察官が殺人罪で立件するケースが多い。

過去10年間で、実際に判決で死刑が言い渡されたものは、殺人罪と強盗致死罪のみで、過去には強盗致死罪による死刑判決が圧倒的に多かったが、最近10年間ではこの2つの罪状による死刑判決数は拮抗している。
この10年間で、検察官が死刑を求刑した事件のうち、有罪となったものが203件あるが、判決は、死刑123名、無期懲役80名であった。

死刑制度がある以上、量刑判断が死刑に該当する犯罪の程度、性格がどの程度のものか、裁判官は苦悩の判断を迫られる。
裁判官も極刑を言い渡すのだから、出来れば何かの拠り所を求めたいのだ。
現時点では、昭和43年の犯行である連続4人殺人事件(通称:永山事件)に対し、昭和58年に最高裁が示した判断基準である9項目の要件が一応の目安とされている。
犯行の罪質、動機、犯行態様(特に殺害方法の執拗さ、残虐性)、結果の重大性(特に殺害された被害者数)、遺族の被害感情、社会的影響、被告の年齢、前科、犯行後の情状という9項目である。
犯行の罪質では、殺害者の数や計画性、被告の判断能力が判断基準となる。

量刑の均衡を保つためには基準も必要なのだろうが、例えば殺人罪では死刑、無期懲役、5年以上の有期懲役と罰条自身に曖昧さをもたせている。
これは、やはり殺人の個別性に由来するものなのだろう。

例えば、友人に毎日暴力を振るう友人の両親を殺害すべく、1年間計画を練って、包丁で20箇所以上を刺して殺害後、指紋を拭き取るなど、証拠を隠滅して逃走したケースがあったとする。
犯行には明らかな殺意や十分な計画性、犯行の残虐性が認められるし、被害者が複数であることに加え、被告の判断能力についても問題が無い。
一方で、被害者に一定の非があり、犯行動機に利欲性がないなどの事実もある。

あなたなら、このケースではどのような判断をするのか。

判例を調べてもケースが全く同じというものは無いのだ。
したがって、今回の事件に関して、メディアの多くが拘っている「永山事件の基準に比べて云々」という論評には違和感があるのだ。

今回のケースでは、その犯行の残虐性もあって、早い段階から継続的にメディアが事件報道を続けてきた。
被害者の遺族も強い意思を持って公判にかかわり、メディアへの対応を行った。
その過程において、被告が友人に出した手紙がリークされたり、弁護士に対して脅迫書が届いたり、懲戒請求があったりもした。
その都度、メディアは大きく取り上げてきた。

被害者遺族の感情は十分理解できる。
犯行の罪質からみても、死刑は妥当と考える。
しかし、メディアはこの事件をセンセーショナルに取り上げることで、判決は死刑しかないという方向に誘導していなかったか。

事件は、殺人事件に限らずその個々の背景や実態が異なる。
これを統一の基準により判断するのは実際には相当困難である。
また、一定の基準を裁判官が勘案することがわかった段階で、捜査当局は、当該基準に沿った捜査を行うし、被疑者からの供述も基準に沿ったものへと誘導するのだ。

今回は、被告が被害者を殺害したという事実関係については争いが無い。
少なくとも冤罪ではないのだ。

争われたのは量刑のみ。
死刑の相場が問われる裁判となったのである。
posted by 8ちゃん at 14:38| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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