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2013年02月28日

明石歩道橋事故を考える(2)

刑事事件が発生した場合、その被疑者を裁判にかける権限は、検察官だけがもっている。
したがって、告訴や告発で被疑者の不法行為を罰してほしいと思っても、検察官が不起訴にすればそれまでである。
勿論、冤罪の存在や起訴された側の社会的信用の失墜を考えれば、起訴は慎重であってほしいのは当然である。

この検察官の起訴の判断は、「裁判において有罪になる」と検察官が確信するか、しないかである。
このため、検察官には証拠等の収集のため、強大な捜査権が付与されているのである。

このように、起訴の権限が検察官だけに付与されている中で、事件の被害者などが、検察官の不起訴判断を不服とする場合、その判断の妥当性を審査するのが、検察審査会の役割である。

検察審査会は、全国の地方裁判所やその支部ごとに165の審査会が設置されており、各審査会のメンバー(審査員)の数はどこの審査会も11名だ。
この審査会で検察の判断が誤りであり、起訴すべきとの結論に至っても、検察には必ず起訴しなければいけないという義務はない。
2009年5月以降は、審査員8名以上の賛同があれば、検察官が不起訴としても検察官に代わる弁護士(指定弁護士)を裁判所から指名させて、強制起訴が可能となったが、それまではあまり権限のない機関だったのだ。


検察審査会の審査員は、検察官の不起訴に対して審査をするのだから、相当、法律に精通していると考えがちだが、検察審査会のメンバーである審査員は、公職選挙法の選挙人名簿の中から抽選で選ばれるのだ。
つまり、この記事を読んでいるアナタも、ある日突然検察審査会の審査員に選ばれるかもしれないのだ。
したがって、法律には全く縁のない人が選ばれるケースの方が多い。

さて、検察審査会という言葉は、小沢一郎事件において、広く世間一般に知られるようになったが、その実態はなかなか見えてこない。
これは、審査会の審理過程が公開されないほか、審査員は、自分が審査員に選定されたことも含めて、その内容を人に話してはいけないという守秘義務があるからである。
これに違反した場合は、6年以下の懲役または50万円以下の罰金を科せられる。
業務上過失致死罪が、5年以下の懲役または100万円以下の罰金であることを考えると、かなり厳しい罰条である。

この明石歩道橋事件では、明石警察署の所長及び副署長を含む書類送検者12名のうち、5名が起訴、7名は起訴されなかった。

これを不服とする遺族らは、明石警察署長及び副署長の起訴を求めて、神戸検察審査会に審査を申し立て、2004年、2005年、そして2009年の3回にわたり、同審査会から起訴をするべきだ(起訴相当)との審査結果を得た。
しかし、検察は起訴しなかった。

3回目の起訴相当の議決があった時には、神戸地検が当時の警察官20人を事情聴取し、事故当日の無線記録を再捜査したりして起訴を検討したが、その結果、「公判を維持して有罪に持ち込めない。」という理由で不起訴にしたと遺族に説明している。
この、遺族への説明自体、異例なことで、通常、起訴しない理由は検察は話さないし、告発者などから不起訴理由の開示を求められれば、簡単な「犯罪事実なし」と記載された紙切れが来るだけだ。

検察の不起訴決定を受け、検察審査会は、2010年1月27日に改正検察審査会法に基づき、副署長に対する起訴議決を行い、起訴されることが決定した。
そして、2010年4月27日に検察官に代わる指定弁護士が起訴したのである。

この事件の嫌疑は、業務上過失致死傷容疑である。
公訴時効は5年だ。
この時効をどの時点から数えるかというと、犯行からカウントするが、死亡被害者が複数損する場合では、最後の被害者が死亡した日から数えるのである。
死亡被害者11名のうち、最後の死亡者が出たのは2003年7月28日だ。
「5年後」は2008年7月27日である。

2010年4月の起訴ではすでに時効ではないのか。

指定弁護士もそれは分かっている。
確かに、単純な事件なら起訴した時点で時効である。
しかしこの事件は、明石市、警察、警備会社がすべて被疑者となった事件である。
警察も、事件当時起訴された明石警察署地域担当官は有罪(控訴審)となっている。

明石警察副署長(署長は既に死亡)は、有罪となった明石警察署の部下を統括する警察署長を補佐する役職であり、有罪となった部下とは共同正犯の関係にある。
刑事訴訟法では、共犯者の裁判中は他の共犯者の時効は中断するのだ。

その立件趣旨で、検察官に代わる指定弁護士は起訴したのだ。

しかし、裁判所はこれを認めなかった。
裁判所は、副所長には過失がなかったとして、共同正犯ではないと言い切った。
共犯者でなければ、時効は成立する。

そして、2013年2月20日、神戸地方裁判所は、この事件について、時効による免訴(有罪・無罪の判断をせずに、裁判を打ち切ること。)を宣言したのである。

検察官に代わる指定弁護士は、直ちに高裁に控訴したものの、現時点においては、新しい証拠品の発見は難しいため、指定弁護士にとっては困難な控訴審が予想される。


裁判所(地裁)の判断は、一定、副署長の過失の有無について述べているものの、有罪、無罪の判断をしたわけではない。
門前払いをしたのだ、
そして、その門前払いの原因は、事件発生から4回にわたり不起訴処分をした検察庁、「起訴相当」を4回決議した検察審査会、この不毛な時間の浪費の間に時効が完成したのである。

犯人が逃亡し続けて、時効が完成したのではない。
被疑者がそこにいるのに、国の制度の不備により時効が完成したのである。


例によって長文になってきたので、次回に続けたい。
次回は、この事件の本質に迫る。


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posted by 8ちゃん at 14:29| Comment(6) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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